設計の基本としては、「バランス感覚」、「音と匂いへの配慮」、「家の中に空気のよどみをつくらないデザイン」があります。
家というのは大きさを持っています。家の顔である「玄関」が小さいと、家全体のバランスが壊れて、失敗の原因になりやすいものです。それに対するキチンとしたバランスを考えた玄関にすることがポイントです。入ったすぐの空間が、小さければ、なんとなく窮屈な感覚で、辛いものがあります。
家を建てようとするお客様も、それを設計する建築家の方も、このバランスを十分に考慮したものにすることをお薦めします。また、近ごろは、玄関スペースの「吹き抜け」が流行りで、広々とした良いイメージですが、「吹き抜け」を安易な発想で家づくりに取り入れてしまうと失敗の原因になります。
家の中の「音」が「吹き抜け」によって、上へ上へと逃げます。家の中の「匂い」が「吹き抜け」によって、上へ上へと逃げます。
特に「音」が家中に蔓延する構造をつくってしまっては絶対にダメです。若い人たちだけで住むならまだしも、お年寄りといっしょに暮らす家なら、家中に音が蔓延する現象は、キツイものがあります。
お年寄りというのは、たいていの人が、自分の理解できる音、知っている音でないと安心できないのです。違和感のある音が一回気になりだしたら、それは、大きな不安へと広がります。これでは、精神的にも良くありません。
「音」は、設計をする上で、本当に重要です。
だからこそ、「吹き抜け」を家づくりに取り入れるのはむずかしいものなのです。設計段階では、「音」も「匂い」もありませんから。住んでみて初めて気づくこともあります。ゆったりとした開放感が生まれるし、上からの採光も取れるので、家全体が明るいイメージになります。「吹き抜け」は、多くのお客様にとっても大きなメリットです。でも、もしかしたらデメリットになるかもしれない点を理解したうえで設計することが重要です。
もうひとつが、「通風」です。
家の中によどみをつくってはいけません。家は、人間がいちばん精神的に落ちつく状況をつくらなくてはいけないのに、「よどみ」があると、それがなくなってしまいます。
カンタンに言うと、ひとつの部屋には窓を2か所つくって、風の通り道をつくってあげる。部屋の中で、風が流れるような2方向を考える。これが家づくりをする上では重要。つねに空間に気流を生むことです。風水でも良く言われていることですが、建築設計にとっても、家の中の空気が止まるという状況は、本当に良くないのです。
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