今後、求められる家というのは、小家族で、暖かい家です。現代の若い人たちの多くが、もともと核家族化した部分から始まっています。家族はひとつの家に住むべきだという考え方は希薄です。だからこそ、「小家族だけど、暖かさがある家」を理想に掲げなければならないのかもしれません。温度だけではなく、メンタル部分も含めて、すべてが暖かい家です。
従来のLDKという形態も変化しつつあります。リビングが淘汰されて、ダイニングとキッチンの重要性が高まっているのです。ダイニングがくつろげる空間であるリビングも兼ね、さらに、キッチンも、だれもが遠慮せずに入っていける共有空間として可動します。
今は、相当に気心の知れた人しか家に上げません。だから、来客があるといっても、すべて相当に親しい人ばかり。迎え入れもダイニングでOK。キッチンにも自由に行き来してもらってもかまわない。こういう現代的発想が、LDKからDK設計という変化につながったのだと考えます。また、別の意味で、LDKからDKへの変化は、使いこなせない無意味な空間を少なくして、活きた空間にするという意味でも、ひじょうに良い発想なのです。
今までの建築というのは、使わない空間、使いこなせていない空間が、あまりにも多すぎます。何年間も、だれも使っていないような空き部屋などです。日本語の「MOTTAINAI」なんて言葉が世界的に流行していますが、やっぱり、家も、すべて使いこなさないと「もったいない」です。家全体をフル稼働できるような使い方が大きな課題です。
すべてをうまい具合に使いこなすためにも、家の「使い勝手」というものが重要になってきます。これは間取りだけでの問題ではありません。生活動線、水周り動線、そして風通しなどを十分に考え抜いた「使い勝手」です。
家は、一度建ててしまえば、建てかえることはむずかしい。そのことを最初から十分に考慮して「使いこなしやすい家」に設計していくことが重要です。家族全員が動きやすい家、すべての空間を使える家。これが現代の良い家です。
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